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遺産分割協議書に署名・押印したあとで「他の相続人に事実と異なる説明を受けていた」「知らされていなかった財産があった」と気づく。
当事務所ではそうしたご状況でのお悩みをご相談いただくこともございます。
遺産分割協議は、いったん成立すると原則としてやり直すことができません。
ただし、成立の過程に問題があった場合には、無効や取消しを主張できる余地があります。
本記事では、相続問題に注力する弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、遺産分割協議のやり直しが認められるケースと、その際の注意点について解説いたします。

遺産分割協議書に相続人全員の署名・押印がなされると、協議書の内容についてすべての当事者の合意がなされているものと取り扱われ、その内容に従い不動産の名義変更や預貯金の払戻し、といったそれぞれの相続財産についての相続手続が進みます。
言い換えれば、署名・押印済みの遺産分割協議書は、その提出を受けて相続手続を実際に行う法務局や金融機関などの第三者から見ても「その場で直接、利害関係人全員の確認を取ること」に代わるほどに信用性の高い文書である、といえます。
このような性質を有する遺産分割協議書でいったん確定した内容を後から覆せるとすれば、手続きの安定性が損なわれてしまいます。
そのため、例えば「よく考えたら不公平だった」「気が変わった」という理由だけで署名・押印済みの遺産分割協議書の内容を後から変更すること(遺産分割協議のやり直し)は原則としてできません。
一方で、次に述べるように、協議の前提そのものに問題があった場合や相続人全員がやり直しに同意した場合は別です。
✅遺産分割の内容が公序良俗に反する(民法第90条)
「公序良俗」とは公の秩序、善良の風俗を合わせもった言葉で、社会的な妥当性をもつことを指します。
遺産取得の条件として犯罪行為が示されているなど、この公序良俗に反する内容の遺産分割は無効となりますが、無効となる範囲が特定の条項のみなのか、それとも遺産分割協議書全体にわたるのかはケースバイケースです。
✅遺産分割協議に参加すべき相続人が欠けていた
一部の相続人を除外して行われた協議は、原則として無効となります。
よくある例として、前妻との間の子、認知された子、代襲相続人などが後から判明したケースが挙げられます。
✅判断能力を欠く相続人が参加していた
認知症などにより協議の内容を理解できない相続人が参加していた場合、その協議は無効となるおそれがあります。
家族が代わりに署名していた場合も同様です。
✅特別代理人の選任が必要にもかかわらず選任されていなかった
未成年者とその親がともに相続人となっているケースでは、両者は互いに遺産を取り合う利益相反関係にあるため、親が法定代理人として未成年者の代わりに署名押印することは認められません。
このようなケースでは未成年者について家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなければならず、この手続を欠いてなされた遺産分割協議は無効となります。
✅署名や押印が本人のものではなかった
他の相続人が勝手に署名・押印していた場合、その協議書は効力を持ちません。
✅重要な前提を誤解していた(錯誤、民法第95条)
財産の内容や価値について重大な誤解があり、その誤解がなければ署名しなかったといえる場合には、錯誤を理由に取消しを主張できる余地があります。
ただし、誤解の原因が自分の不注意にある場合は認められにくくなります。
✅騙されて署名した(詐欺、民法第96条)
「この不動産にはほとんど価値がない」といった虚偽の説明を受けて署名した場合、詐欺を理由に取消しを主張できる可能性があります。
✅強く迫られて署名した(強迫、民法第96条)
断れば不利益を受けると告げられるなど、意思決定の自由が奪われた状況で署名した場合も同様です。
たとえ上述のような無効や取消しの事由がなくても、相続人全員が合意すれば、遺産分割協議をやり直すことは可能とされています。
ただし注意点があります。
いったん成立した遺産分割をやり直すと、財産の移転が相続ではなく贈与や譲渡として扱われ、想定外の課税が生じる場合があります。
特に一度財産の名義変更等をしてしまっているケースでは、税務上の取り扱いについて、税理士と連携して事前に確認することが大切です。
特に相続人間で争いの無かったケースでも、いったん遺産分割協議を行った後で、さらに被相続人名義の預貯金や不動産が判明することがあります。
この場合、原則として協議全体をやり直すのではなく、新たに判明した財産についてのみ協議を行います。
ただし、その財産が遺産の大部分を占めるなど、前提が大きく変わる場合には、協議全体の効力が問題になることもあります。
こうした将来の紛争を避けるために、あらかじめ協議書に後日判明した財産の取り扱いについて定めておく方法が採られることも多いです。
遺産分割協議のやり直しを求められるかどうかは、協議書への署名に至った経緯と、それを裏付ける資料によって判断が分かれます。
当時のやり取りの記録や、説明を受けた内容を示す資料が残っているかが重要です。
弁護士に相談すれば、主張が通る見込みの見極めに加え、協議のやり直しではなく、不当利得の返還請求など、別の形で調整する解決策を検討できる場合もあります。
すでに名義変更が済んでいる場合、時間が経つほど元に戻すことは難しくなります。
疑問を持った段階でお早めに弁護士にご相談ください。
遺産分割協議は、成立すれば原則としてやり直せません。
ただし相続人が欠けていた、判断能力を欠いていた、騙されて署名したといった事情があれば、無効や取消しを主張できる余地があります。
全員の合意によるやり直しも可能ですが、すでに協議書に基づく名義変更等が進んでいる場合には税務上の影響に注意が必要です。
まずは弁護士に相談して状況を整理することから始めましょう。

弁護士法人リブラ共同法律事務所は、札幌(札幌駅前・新札幌)・東京(吉祥寺)を拠点に、相続を中心に取り扱う法律事務所です。相続・遺産分割の相談累計件数は1700件を超え、相続に強い弁護士9名による相続チームが、複雑な事案や紛争性の高い案件も含めて、依頼者様一人ひとりに寄り添った解決をサポートしています。
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