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特別受益とは?生前贈与が遺産分割で持ち戻される条件を弁護士が解説

この記事を読むのに必要な時間は約8分34秒です。

はじめに

相続が発生した場合、法定相続分に応じた遺産分割を進めていくのが原則ですが、法定相続分通りに分割することが必ずしも正しいとは限りません。
例えば、相続人の中に、被相続人から生前に贈与を受けていた人がいる場合、遺産分割でその贈与分を考慮する「特別受益の持ち戻し」という制度があります。

 

✅特別受益
特別受益とは、相続人が被相続人から受けた生前贈与や遺贈のうち、相続分の前渡しとみなされるものを指します。
この制度によって、相続人間の公平を保つことができます。

ただし、どのような贈与が特別受益にあたるのか、持ち戻しの計算はどうするのかなど、複雑な判断が必要になることも少なくありません。
理解が不十分なまま進めると、遺産分割で不利益を被るおそれもあります。
本記事で、その条件と考え方を解説します。

 

特別受益が問題となる事例

✅具体例
相続では、生前に一部の相続人だけが多額の贈与を受けているケースが珍しくありません。
たとえば、長男が住宅購入資金として1,000万円の援助を受けていた場合や、次男が事業資金として500万円を受け取っていた場合などです。

こうした状況で、生前贈与をいっさい考慮せずに遺産分割を行えば、すでに多額の財産を受け取っている相続人がさらに法定相続分まで取得することになり、著しく不公平になります。

また、被相続人が特定の相続人に教育費や結婚資金を援助していた場合も、その金額や性質によっては特別受益と評価される可能性があります。
これらの贈与の有無や金額について相続人間で認識が食い違い、遺産分割協議が難航する原因になることもあります。
その際、被相続人が

さらに、遺産分割における特別受益の持ち戻しには期間の制限がないため、何十年も前の贈与であっても遺産分割時に問題となることがあります。
いつの時点での評価額を考慮するのかは後述します。

 

特別受益を見落とした場合のリスク

✅リスクについて
特別受益の持ち戻しを適切に行わないと、さまざまな問題が生じます。
最も深刻なのは、相続人間の公平が著しく損なわれることです。

贈与を受けていない相続人は、本来受け取るべき相続分を十分に取得できません。
たとえば、遺産総額が3,000万円で、長男が生前に1,000万円の贈与を受けていた場合、この贈与を考慮せずに分割すれば、長男の実質的な取得額は他の相続人より大幅に多くなります。

 

✅遺産分割のやり直しは認められないのが原則
いったん成立した遺産分割協議をやり直すことは、原則として認められません。

ただし、重大な特別受益の存在を知らないまま合意していたなど、錯誤にあたる事情があれば、協議の効力が争われることもありますが立証が困難な場合もあり、注意が必要です。

 

✅相続税との関係
これまで説明してきた特別受益は遺産分割における公平を図るための民法上の制度であり、相続税の計算とは別の問題です。
生前贈与は、贈与税や相続税の生前贈与加算の対象となる場合があるため、税務面については税理士とも連携して別途確認することが大切です。

相続人同士の関係悪化も深刻な問題です。
不公平な分割結果は、長期にわたって家族間の対立を生み、修復が難しくなることも珍しくありません。

 

特別受益の適切な判断と対処法

✅特別受益にあたるか
特別受益にあたるかどうかは、贈与の性質や金額、被相続人の資力などを総合的に考慮して判断します。
一般的には、住宅購入資金、事業資金、高額な教育費用、結婚費用などが特別受益として問題になりやすいとされています。

まず、特別受益の存在を正確に把握することが重要です。
被相続人の預金通帳や不動産登記簿、贈与契約書などの資料を集め、過去の贈与の有無や金額を調査します。
相続人間で情報を共有し、隠れた贈与がないか確認することも必要です。

 

✅対処法(特別受益額の評価の方法)
特別受益の評価は、原則として相続開始時点の価値で行います。

不動産の場合は、相続開始時の時価で評価します。
金銭の場合は、贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算した額で評価します(最高裁昭和51年3月18日判決)。
物価の変動が大きいときは、額面よりも高く評価されることがあります。
当時、いくらもらったのか相続人間で争いが生じる場合があります。
その際は金額を証明する資料などで特別受益として評価する金額を決めていきます。

 

✅「みなし相続財産」の考え方
持ち戻しの計算では、まず「みなし相続財産」を算定します。
これは、実際の遺産総額に特別受益額を加算した金額です。
その上で各相続人の具体的相続分を計算し、すでに受けた特別受益を差し引いて、最終的な取得額を決めます。

 

✅「持ち戻し免除の意思表示」について
被相続人が、生前贈与をしていたとしても、当該贈与を遺産分割の際、みなし相続財産に持ち戻すことを希望しない旨の意思表示(持ち戻し免除の意思表示)をしている場合は、持ち戻し計算を行う必要がありません

ただし、この意思表示は明確である必要があり、解釈をめぐって争いになることもあります。
どういった証拠があれば、この持ち戻し免除の意思表示として評価できるのか、専門家である弁護士がご助言します。

 

弁護士に相談するメリット

特別受益に該当するかという判断や持ち戻し計算は、法的知識と実務経験を要する複雑な作業です。
弁護士に相談することで、特別受益該当性の適切な判断と正確な計算がしやすくなります。

弁護士は、依頼者の状況に応じて必要な資料の集め方をアドバイスし、特別受益の立証に必要な証拠の整理を支援します。

また、他の相続人との交渉でも、法的根拠に基づいた主張を展開できます。

遺産分割調停や審判になった場合も、弁護士が代理人として対応することで、依頼者の権利の保護につながります。
特別受益の評価や計算方法について専門的な主張を行い、適正な解決を目指します。

さらに、相続税申告においても、税理士と連携しながら、必要に応じて特別受益の事情も踏まえた対応が可能です。
これにより、将来の税務リスクを抑えることが期待できます。

 

まとめ

特別受益の持ち戻しは、相続人間の公平を保つための重要な制度です。

しかし、どのような贈与が特別受益にあたるか、どのように計算するかは専門的な判断を要します。

適切な対応を怠ると、不公平な遺産分割や相続人間の対立など、さまざまなリスクが生じる可能性があります。

特別受益が関わる相続では、早期に弁護士へ相談し、適切な法的アドバイスを受けることが大切です。
専門家のサポートにより、公平で円満な相続の実現につながります。

 


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監修者情報

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菅原 仁人(すがわら まさと)

弁護士法人リブラ共同法律事務所 代表社員弁護士|弁護士登録番号:40280

注力分野:遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成、離婚

相続は、争う相手が見知らぬ他人ではなく、兄弟・親族であることが多く、法律問題であると同時に、大きな心理的負担を伴うものです。私は、依頼者の方が安心して手続きを進められること、そして納得のいく解決を実現することを何より大切にしています。相続についてお悩みやご不安がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

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