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相続人に認知症の人がいる場合の遺産分割はどう進めるか

この記事を読むのに必要な時間は約6分43秒です。

はじめに

父が亡くなり、母と子で遺産分割を進めようとしたところ、母に認知症の症状があり、話し合いの内容を理解できる状態ではない。
こうしたご相談は年々増えています。

遺産分割協議は法律行為であるため、判断能力を欠く相続人が参加した協議は無効となるおそれがあります
良かれと思って家族が代わりに署名すると、後になって大きな問題になりかねません。

本記事では、相続を中心に取り扱う弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、相続人に認知症の方がいる場合の進め方について解説します。

 

家族が代わりに署名してはいけない理由

✅協議そのものが無効になる可能性がある

認知症等により、判断能力を欠く方が参加した協議は、後から無効を主張されるおそれがあります。
不動産の名義変更を済ませていても、やり直しが必要になりかねません。

✅本人の意思に基づかない署名は許されない

たとえ家族であっても、本人に代わって署名や押印をすることは認められません。

✅他の相続人との間に不信を招く

「遺産分割協議を勝手に進めた」という不満が生じ、かえって紛争の火種になります。

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成年後見制度の利用が原則

判断能力を欠く相続人がいる場合、家庭裁判所に成年後見人等の選任を申し立て、選任された後見人が本人に代わって遺産分割に参加するのが原則的な進め方です。
その際、下記の点に注意が必要です。

✅申立てから選任までに期間がかかる

事案によりますが、申立てから選任まで数か月程度を要することが一般的です。
遺産分割を急ぐ場合でも、この期間は見込んでおく必要があります。
申立時には財産目録等、必要な資料が多岐に渡り、一人で対応するのは負担が大きいです。
弁護士に相談し、整理することで負担を軽減できます。

✅後見人は本人の取得分を確保する立場にある

後見人は本人の財産を守る立場にあるため、本人の取得分(実際に受け取る相続財産の額、いわゆる具体的相続分)を法定相続分より少なくする内容の分割には、原則として応じられません
「母の取り分をゼロにして子で分ける」といった協議はできなくなります。

✅選任後は原則として継続する

成年後見は遺産分割が終われば終了するものではなく、本人の判断能力が回復しない限りそのまま継続します。
後見人への報酬が発生する場合もあります。

 

後見人が他の相続人である場合の注意点

✅成年後見申立て

家庭裁判所に成年後見を申し立てた場合、親族が後見人に選任されることもありますが、その親族自身も相続人である場合、本人と利益が対立する関係になります。

この場合、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立て、特別代理人が本人に代わって協議に参加する必要があります。
「後見監督人」が選任されている場合には、監督人が本人を代表して遺産分割協議をすることとなります。

✅任意後見契約

本人が任意後見契約を締結していた場合は、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てることで、初めて任意後見人が代理権を行使できるようになります。

任意後見人に親族が選任された場合、本人と利益が対立するため、任意後見人が本人を代理することはできず、任意後見監督人が本人を代表して遺産分割協議をすることになります。
 

「判断能力がない」とは誰が判断するのか

物忘れが増えてきた程度なのか、協議の内容を理解できない状態なのか。
その線引きはご家族の実感だけでは決められません。

判断の目安となるのは医師の診断です。
成年後見の申立てには医師の診断書が必要となり、家庭裁判所はその内容をもとに判断能力の程度を検討します
申立て時には専用の診断書を作成依頼します。

軽度であれば、本人が理解できるよう説明を尽くしたうえで協議に参加していただける場合もあります。

一方で、後から「理解していなかった」と争われるリスクを考えると、疑いがある段階で専門的な判断を得ておくほうが安全です。

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弁護士に相談するメリット

成年後見の申立ては、必要書類が多く、医師の診断書の取得や財産目録の作成といった複雑な作業も伴います。
弁護士に相談すれば、申立ての準備と並行して、遺産分割全体の見通しを立てることができます。

また、後見制度を利用すると分割の自由度が下がるため、「そもそも遺産分割を今急ぐ必要があるのか」という点から検討する余地もあります
相続税の申告期限や不動産の処分予定など、事情によって最適な進め方は変わりますので、事案に応じた進め方を弁護士がご提案します。

判断能力の低下が疑われるものの程度が明らかでない場合には、補助や保佐といった他の類型が適することもあります。
どの制度を利用すべきかの見極めも含めてご相談いただけます。

 

まとめ

相続人に認知症の方がいる場合、家族が代わりに署名して協議を成立させることはできません。
成年後見制度の利用が原則となり、期間や相続財産の取得分の面で制約も生じます。

進め方を誤ると協議のやり直しが必要になります。
着手する前の段階でご相談ください。

 


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弁護士法人リブラ共同法律事務所は、札幌(札幌駅前・新札幌)・東京(吉祥寺)を拠点に、相続を中心に取り扱う法律事務所です。相続・遺産分割の相談累計件数は1700件を超え相続に強い弁護士9名による相続チームが、複雑な事案や紛争性の高い案件も含めて、依頼者様一人ひとりに寄り添った解決をサポートしています。

 

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監修者情報

菅原仁人 弁護士 顔写真

菅原 仁人(すがわら まさと)

弁護士法人リブラ共同法律事務所 代表社員弁護士|弁護士登録番号:40280

注力分野:遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成、離婚

相続は、争う相手が見知らぬ他人ではなく、兄弟・親族であることが多く、法律問題であると同時に、大きな心理的負担を伴うものです。私は、依頼者の方が安心して手続きを進められること、そして納得のいく解決を実現することを何より大切にしています。相続についてお悩みやご不安がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

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