Table of Contents
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分42秒です。
✅今回ご紹介するのは、親が亡くなった後、相続人の一部だけが実家に住み続けている場合に問題となりうるケースです。
その家に住み続けている相続人が固定資産税は払っているようだが、家賃に相当するお金は誰にも支払われていないとすると、他の相続人からすれば、自分の持分にあたる利益を一方的に使われていると感じるのではないでしょうか。
✅賃料相当額を請求できるかどうかは、その相続人がどのような経緯で住み始めたかによって大きく変わります。
本記事では、相続を中心に取り扱う弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、請求が認められる場合と認められにくい場合の分かれ目、そして実務上の着地点について解説します。
✅相続開始により相続人全員の共有状態となる
被相続人が亡くなると、相続財産は相続人全員の共有となります。
遺産分割が成立するまでの間、実家は特定の相続人のものとはいえないのです。
一部の相続人が当然に不動産に住み続ける権利を有しているわけではないのです。
✅自己の持分を超える場合
そして、共有物を単独で使用している共有者は、自分の持分を超える使用について、他の共有者に対価を償還する義務を負うとされています(民法第249条第2項)。
この原則からすれば、実家に住み続けている相続人は、他の相続人の持分割合に応じた賃料相当額を負担すべきということになります。
ただし、相続人の間に別段の合意がある場合には、その合意が優先されます。
実務で争われるのは、まさにこの点です。
どういった場合に「別段の合意」があったといえるのかが問題となります。
✅生前から同居していたケース
相続人の一人が、被相続人の生前、被相続人から許諾を得て、生前からその家に同居していた相続人がいる場合、裁判例では、被相続人と同居相続人との間に無償で使用させる合意、すなわち「使用貸借」の関係があったと推認されると判断されています。
被相続人は、自分が亡くなった後も、その相続人がその家に無償で住み続けることに同意していたと考えられるためです。
この推認が働く場合、相続開始後も住み続けていることについて賃料相当額の請求は認められないという結論になりやすくなります。
遺産分割協議が成立するまで、相続人は無償で家に住み続けることが出来ることになります。
(具体例)親の介護のために同居していた、家業を継ぐために同居していたといった事情があれば、この推認はより働きやすくなります。
✅相続開始後に住み始めたケース
被相続人の死亡後に、他の相続人に無断で住み始めた場合は事情が異なります。
なぜなら、被相続人との間に無償使用の合意があったとはいえないためです。
このような場合、使用貸借の推認は働きませんので、賃料相当額の請求が認められやすくなります。
(具体例)相続開始後に転居してきた、他の相続人が明確に反対していたといった事情があれば、請求が認められる可能性は高まります。
✅配偶者が住み続けているケース
実家に住んでいるのが被相続人の配偶者である場合は、さらに別の考慮が必要です。
前記のとおり、被相続人との間の無償使用の合意により賃料相当額の請求が認められないという結論になるだけでなく、遺産分割協議の結果、配偶者居住権(民法1028条)が認められる可能性があります。
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた建物に居住していた配偶者が、その建物を取得しなくとも、原則として終身、その建物に住み続けることができる権利です。
例えば、被相続人の遺産の大半が不動産である場合、配偶者が不動産の所有権を取得すると、その分預貯金などの他の財産を十分に取得できなくなることがあります。
そこで、自宅に住み続ける権利を配偶者に認め、配偶者が自宅の所有権を取得しなくとも自身が亡くなるまで自宅に住み続けることができるだけでなく、不動産以外の財産を取得できるよう定められた制度です。
また、遺産分割や遺贈などにより被相続人が所有していた不動産を配偶者以外の人物が取得することになった場合でも、配偶者はすぐに自宅から退去しなければならないわけではありません。
このような場合には配偶者短期居住権(民法1037条)により、相続が発生した後も当面の居住が保証されます。
相続において、誰が不動産を取得するのかだけでなく、残された配偶者がその後も住み続けられるかという点を含めて遺産分割を検討することが重要です。
✅請求の方法
賃料相当額の請求は、不当利得の返還請求などの形で行うことになります。
ここで注意が必要なのは、この請求が遺産分割そのものとは別の手続きとして扱われるのが原則という点です。
遺産分割は不動産の分け方(単独所有や共有など)を決めるための制度なので、賃料相当額の支払いについて遺産分割調停の中で当然に決着するとは限らないのです。
✅請求に必要な資料
賃料相当額の請求のために集めておくべき資料としては、賃料相場の根拠となる不動産業者の査定書、いつから住んでいるかを裏付ける住民票の記録、過去のやり取りを示すメールや手紙などが挙げられます。
とくに「いつから、どういう経緯で住み始めたか」を示す資料が結論を左右します。
✅被請求の場合
一方で、住んでいる側からは、固定資産税を単独で負担してきた、屋根や給排水設備の修繕費を支出した、被相続人の介護を担ってきたといった反論を行うこととなります。
主張が食い違う場合、自身の主張を裏付ける客観的資料をどれだけ用意できるかがポイントとなります。
✅事案に応じた解決
ここまで見てきたとおり、賃料相当額の請求は見通しが立てにくく、別の手続きが必要になることもあります。
遺産分割調停だけでなく、不当利得返還請求訴訟を提訴しなければならないとなるとその負担はとても大きいものと考えられます。
そのため、実務では、賃料の請求そのものを目的とするより、遺産分割の中で全体の取り分を調整する形で解決を図るほうが現実的な場合が多くあります。
住み続ける相続人が不動産を取得して他の相続人へ代償金を支払う、不動産を売却して代金を分ける、居住の継続を認めたうえで他の遺産の配分で調整する等、どのような解決が適しているのかは事案の内容により異なります。
✅適切な交渉
当然、これまで住んでいた家から出て行ってほしいと、突然、建物の明渡しを求めると感情的な対立が深まり、かえって解決が遠のく可能性があります。
そこで、弁護士に交渉を依頼することで、賃料相当額の請求を交渉材料として位置づけながら、順序を設計して協議を進めることができます。
以上のとおり、実家に住み続けている相続人へ賃料相当額を請求できるかどうかは、住み始めた経緯によって結論が分かれます。
生前からの同居であれば使用貸借が推認され、請求が認められないことも珍しくありません。
一方で、請求の可否にかかわらず、実家をどう分けるかという本体の問題はいずれ解決しなければなりません。
感情的な対立が深まる前に、全体の分け方を設計することが、結果的に最も早い解決につながります。
弁護士法人リブラ共同法律事務所は、札幌(札幌駅前・新札幌)・東京(吉祥寺)を拠点に、相続を中心に取り扱う法律事務所です。相続・遺産分割の相談累計件数は1700件を超え、相続に強い弁護士9名による相続チームが、複雑な事案や紛争性の高い案件も含めて、依頼者様一人ひとりに寄り添った解決をサポートしています。
✅ 相続・遺産分割の相談累計1700件超の豊富な解決実績
✅ 相続を中心に取り扱う弁護士9名による相続チームが万全のサポートを提供
✅ 札幌(札幌駅前・新札幌)・東京(吉祥寺)での対面相談に対応、オンライン相談も可能
✅ 遺産分割・遺留分・相続放棄・家族信託・財産使い込みなど、相続全般に幅広く対応
✅ 初回50分の無料相談、365日ご予約受付
札幌・東京で遺産分割についてお困りの方は、弁護士法人リブラ共同法律事務所までお気軽にご相談ください。