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不動産はひとつだけでも相当の価値を有することが多いため、相続に関するご相談をお受けしていても遺産の大半を不動産が占めるケースは少なくありません。
そして、こうしたケースの協議で特に問題となりやすいのは、「その不動産をいくらと評価するか」といった点です。
不動産を取得したい側は低く、代償金を受け取る側は高く見積もりたい。
立場が逆になれば主張も逆になるため、当事者だけでは決着しにくい論点で、協議が止まってしまう原因にもなりえます。
本記事では、相続問題を多数取り扱う弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、不動産の評価額が争いになる理由と、不動産鑑定が必要になる場面について解説します。
不動産は動産と異なり、「全く同じ」といえるものが存在しません。
それだけに不動産の価値を評価する場面でも様々な視点・目的に応じた基準が用いられています。
✅固定資産税評価額
その不動産のある市町村(東京都23区内の場合は東京都)が固定資産税を課す基準として定めた評価額です。
毎年登記上の所有権者あてに送付される納税通知書で確認できるため資料の取得は比較的容易ですが、実勢価格より低くなる傾向があります。
✅相続税評価額
相続税の申告に用いる評価額で、納税者(通常は相続人)が自ら、国税庁の示した財産評価基本通達をもとに計算して出すものです。
例えば宅地については市街地的形態を形成する地域にあるものは「路線価方式(その画地の沿設する路線に設定されている路線価に、画地調整のうえ地積を乗じる)」、それ以外の宅地は「倍率方式(固定資産税評価額に国税局長が一定の地域ごとに実情に即するよう定めた倍率を乗じる)」で計算するよう通達されています。
いずれにしても、相続税評価額も固定資産税評価額と同じく、実勢価格より低めに算出されるのが一般的です。
✅不動産業者の査定額
実際に売却した場合の想定価格を不動産業者に依頼して出してもらう方法です。
その不動産の面積や直近の取引事例などから簡易的に出す机上査定、実際に物件を訪問し不動産そのものの状態や周辺環境も踏まえて行う訪問査定といった方法などが取られます。
そのため実勢価格に近い評価が得られやすい一方で、業者によって金額に幅が出ます。
✅不動産鑑定士による鑑定評価額
不動産鑑定士に鑑定を依頼して得られる評価額です。
不動産の類型に応じた様々な手法を通じて専門家が鑑定するため最も客観性が高い結果が得られる反面、費用(数十万円の不動産鑑定士への報酬など)や時間がかかります。
同じ不動産でも、どの基準を採用するかで数百万円単位の差が生じることは珍しくありません。
評価額で揉めるケースといっても、必ずしもどちらかが不当な主張をしているというわけではなく、双方が採っている基準の違いに起因している場合も多いのです。
不動産の評価において見落とされやすいのが、いつの時点の価値を評価するのかという問題です。
遺産分割の対象となる不動産をいくらと評価するかは、実務上、遺産分割を行う時点の価値を基準とするのが一般的です。
そのため、相続開始から年月が経過している事案では、地価の変動などの影響を受けてすでに不動産の価値が大きく変わっていることがあります。
また、遺産分割協議が長引いている場合、途中で取得した査定書が古くなっていることもあります。
話し合いを再開する際は、資料が現在の状況を反映しているかどうかを確認する必要があります。
✅複数の査定を取る
特に不動産業者に査定を依頼する場合、一社の査定だけではその後ほぼ間違いなく他の相続人から「その業者の見立てにすぎない」と反論されてしまいます。
そのため、協議段階では複数社の査定を取り、その中間値を採用する方法がよく用いられます。
✅評価の前提条件を揃える
「更地として評価するのか、建物付きで評価するのか」、また「借地権や賃借人の有無をどう見るか」といった前提条件の食い違いから評価額の差が生じてしまっているだけというケースもあります。
まず前提を揃えることで、当事者間の評価の差が縮まることがあります。
✅売却を前提に考える
実際に売却して代金を分けるのであれば、評価額で争う理由そのものがなくなります。
誰も不動産を取得したいと考えていないのであれば、この「売却を前提に考える」という認識を共有することが最も争いになりません。
不動産鑑定市に依頼して行う鑑定は費用の負担が大きいことから、遺産分割の際に常に行われているわけではなく、一般的には次のような事情がある場合に検討されます。
✅当事者が提示した査定額の開きが大きく、歩み寄りが見込めない
✅対象が広大地や不整形地、借地権付きなど、一般の不動産業者の査定になじみにくい
✅遺産分割審判に進み、裁判所が評価を確定させる必要がある
とくに調停や審判の段階では、当事者の合意ができない場合に手続の中で鑑定が実施されることがあります。
ただし、鑑定費用は当事者が負担するのが原則です。
そのため実務では、鑑定に進む前に、査定額の中間で合意できないかを探ることが多いです。
評価額の争いは、金額そのものよりも「どの基準で決めるか」という土俵の設定によって結論が変わります。
弁護士に相談すれば、事案の性質に応じてどの評価方法が妥当か、鑑定に進むべき事案かを整理できます。
また、評価額は代償金の額に直結するため、他の遺産の配分と組み合わせて調整する余地もあります。
評価額の一点で対立を続けるより、全体の分け方の中で折り合いをつけるほうが早く解決する場合が少なくありません。
お悩みの際はこうした調整の経験を積んだ弁護士にアドバイスを求めることをお勧めいたします。
不動産の評価額で揉めるのは、評価の基準が複数あることに原因があります。
まずは複数の査定を取り、評価の前提条件を揃えることが出発点です。
鑑定は有効な手段ですが、費用と時間の負担があります。
鑑定に進むべきかどうかも含め、早い段階でご相談ください。

弁護士法人リブラ共同法律事務所は、札幌(札幌駅前・新札幌)・東京(吉祥寺)を拠点に、相続を中心に取り扱う法律事務所です。相続・遺産分割の相談累計件数は1700件を超え、相続に強い弁護士9名による相続チームが、複雑な事案や紛争性の高い案件も含めて、依頼者様一人ひとりに寄り添った解決をサポートしています。
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