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「相続が発生したので遺産分割協議を進めようとしたところ、相続人の一人と連絡が取れない」といった状況でのご相談は当事務所でも珍しくありません。
相続人全員の合意がなければ遺産分割協議は成立せず、そうしないと被相続人名義の財産についての相続手続を進めることができません。
本記事では、相続人と連絡が取れない場合の法的対処法について、札幌・東京の弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
相続人との連絡が途絶えてしまう理由は様々です。
✅ 長年音信不通で現在の住所が分からない
✅ 海外に移住していて所在が不明
✅ 家族関係が疎遠で連絡先を知らない
✅ 相続トラブルを避けるために意図的に連絡を絶っている
✅ 認知症などで施設に入所しており連絡方法が分からない
特に兄弟姉妹が相続人となる場合や、前妻の子が相続人に含まれる場合など、日頃から交流のない相続人がいるケースでは、連絡先の把握自体が困難なことがあります。

連絡の取れない相続人が一人でもいる状態が続くと、以下のような問題が生じます。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。
一人でも参加していない状態で作成された遺産分割協議書は無効であり、不動産の名義変更や預金の解約などの相続手続を進めることができません。
相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。
遺産分割が未了の場合でも申告は必要なので、期限までに一旦、法定相続分で相続したことにして「未分割申告」を行います。ですが未申告分割の場合は配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えないため、本来よりも高額な相続税を納付しなければならない可能性があります。
遺産分割が未了の状態では相続人全員が共同で相続財産の管理責任を負います。ですが特に相続財産に不動産が含まれる場合には、相続人間の連携不足、実際の管理を押し付け合う等の問題も生じやすく、そうして適切な管理が行われないと建物の劣化や近隣トラブルが発生するリスクが生じます。このような問題の拡大を防ぐためにも早期の遺産分割が望ましいといえます。

「連絡が取れない」にも様々な状況がありますが、まず相続人の連絡先も知らないようなケースでは、「戸籍の附票」を取得することで所在調査を行います。
戸籍の附票には、住所の移転履歴が記録されています。
そのため対象の相続人の本籍地の市区町村役場で戸籍の附票を取得することで、現住所を確認できる可能性があります。
戸籍の附票を申請する際には、対象の相続人の現在の本籍地が判明していないとなりません。また、窓口ではご自身と対象者が同じ被相続人の法定相続人同士であることを証明できなければなりません。
そのため、最低限①「被相続人の死亡」、②「窓口で手続する方が法定相続人であること」、および③「対象者も法定相続人であること」の全てがわかるだけの戸籍謄本を取得しておく必要があります。必要に応じて④「対象の相続人の最新の戸籍謄本」を追加し(③と同一の場合もあります)、記載されている本籍地の情報をもとに戸籍の附票を申請します。
こうして判明した住所へ手紙を送るなどして、協議を試みるのが一般的な流れです。もし連絡を無視される等して協議に応じてもらえない場合には遺産分割調停を申し立て、家庭裁判所から期日への呼び出しをしてもらうことも考えられます。
所在調査を行っても相続人が住所の届出をしていない等の理由で居所が分からない場合は、不在者財産管理人制度を利用します。
民法は「不在者」(住所、居所からいなくなり容易に戻ってくる見込みのない者)の財産管理について定めています(民法第25条)。
不在者財産管理人とは、不在者のために財産を管理・保存等を行う人のことをいい、利害関係人の申立てにより家庭裁判所が選任します。遺産分割協議を行う相続人同士もこの利害関係を有する者としてこの申立を行うことが出来ます。
不在者財産管理人の選任は、不在者の判明している最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
遺産分割を目的として相続人が申立てを行う際に必要な標準的な書類は以下の通りです。
✅ 不在者財産管理人選任申立書
✅ 不在者の戸籍謄本
✅ 不在者の戸籍の附票
✅ 財産管理人候補者の住民票
:利害関係のない親族等で候補者がいれば提出
✅ 不在の事実を証明する資料
:職権削除された住民票、「転居先不明」「あて所に尋ねあたりません」で返送された不在者宛の書留郵便、調査会社の報告書など
✅ 不在者の財産および被相続人の遺産に関する資料
:不動産登記事項証明書、通帳写しなど
✅利害関係を証する資料
:申立人と不在者がともに同一の被相続人についての相続人であることがわかる戸籍謄本
不在者財産管理人の権限は主に不在者の財産の「保存」に限られています(民法第103条)。そのため、選任された財産管理人と遺産分割協議を行うことはこの基本的な権限を超えた行為であるため、さらに家庭裁判所の許可が必要です(民法第28条)。この許可については財産管理人が裁判所に申立を行うものとされています。

相続人の生死が7年以上明らかでない場合は、失踪宣告の手続を検討します。
失踪宣告とは、長期間生死不明の人を法律上死亡したものとみなす制度です。
住所・居所へ容易に戻る見込みのない不在者については、生死不明になってから7年が経過したときに利害関係人による家庭裁判所への普通失踪宣告(民法第30条第1項)の申立てをすることが可能になります。
家庭裁判所による普通失踪宣告が確定すると、その相続人は生死不明から7年を経過した時点で法律上死亡したものとして扱われます。
その結果、失踪者に子がいる場合は代襲相続が発生し、子がいない場合は他の相続人で遺産分割を行うことができるようになります。
失踪宣告の手続には、1年以上の期間を要することが通常です。
家庭裁判所での審理や官報での公告手続が必要なため、不在者財産管理人制度と比較すると、解決までに長い時間がかかります。

相続人との連絡が途絶えている状況に対する対応や法的手続には専門知識を要します。
連絡の取れない相続人に対して所在調査のうえ遺産分割協議に応じてもらうよう交渉するのか調停の申立てに踏み切るべきか、調査を経ても所在不明な場合には不在者財産管理人の選任と失踪宣告のどちらを選ぶべきか、個別の事案によって判断が異なります。
弁護士に相談することで、状況に応じた最適な手続を選択できます。
弁護士には、連絡の取れない相続人の戸籍謄本や戸籍の附票、住民票等の取得をご依頼いただくことも可能です。役所の窓口に行く時間がない、転居や転籍が多く取得しなければならない戸籍等が多い場合なども弁護士にお任せいただければスムーズに調査を進めることが可能です。
また、弁護士会照会制度を活用し勤務先や関係機関からより詳細な情報を得られる場合もあります。
家庭裁判所への申立書の作成や必要書類の準備にも、法律の知識を要します。申立てを受けた裁判所が個々の事案ごとに財産管理人の選任や失踪宣告を行うのが相当なのかどうかを判断するにあたり、追加資料の提出やさらなる調査が求められるケースもあります。
弁護士に依頼すれば、申立書の作成から裁判所での手続まで、全面的なサポートのもとで迅速に進めることが可能です。
不在者財産管理人が遺産分割協議を行うことが想定されるケースでは弁護士や司法書士などの専門家が選任されることも多いです。当事務所の弁護士は不在者財産管理人として財産管理や遺産分割協議を行ってきた経験も活かして、申し立てる側になった相続人の方への適切なサポートを行います。

札幌・東京で相続問題にお困りの方に、当事務所が選ばれる理由をご紹介します。
当事務所は相続分野に特化した法律事務所として、累計1,500件以上の相続相談に対応してきました。相続人との連絡が取れないケースにも多数対応しており、豊富な経験に基づいた的確なアドバイスを提供いたします。
相続問題でお困りの方のために、初回50分間の無料相談を実施しています。
相続人の状況や財産の内容を詳しくお伺いし、最適な解決方法をご提案いたします。
札幌、東京の計4拠点で全国でご相談にも対応しております。遠方にお住まいの相続人がいる場合でも、迅速に対応いたします。

相続人の一人と連絡が取れない場合、放置していても問題は解決しません。
まずは戸籍の附票などで所在調査を行い、それでも連絡が取れない場合は、不在者財産管理人制度や失踪宣告の手続を検討する必要があります。これらの手続はときには専門的な知識が必要で、個人で対応することは困難です。
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、相続人と連絡が取れないケースについて、豊富な経験と専門知識を持つ弁護士が、適切な解決方法をご提案いたします。相続問題にお困りの方は、まずは初回無料相談をご利用ください。現在の状況を詳しくお伺いし、最善の解決策を一緒に考えてまいります。