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夫婦の共有名義不動産を相続させることのリスクと事前対策

この記事を読むのに必要な時間は約5分10秒です。

はじめに

住宅の購入時に、住宅ローン控除や相続税対策などを目的に不動産を夫婦の共有名義とすることは珍しくありません。
共有名義にすることで安心感を覚える方も多いかもしれませんが、相続が発生したときには権利関係や資産管理が複雑になり、将来の家族間トラブルや資産価値の低下につながる可能性があります。

 

本記事では相続手続に関するご相談を数多くお受けしている弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、この問題を早期に検討し、適切な対策を取ることの重要性を解説いたします。

 

1. 権利関係が複雑になるリスク

子どもが2人(長男、長女)がいる夫婦でそれぞれ2分の1ずつ不動産の持分を所有している場合で考えてみましょう。
仮に夫が亡くなり、遺言書による指定や遺産分割協議での合意がなければ、夫の持分2分の1は配偶者と子どもが法定相続分に従って承継します。

この不動産の場合は、妻が4分の3、長男が8分の1、長女が8分の1という持分割合になります。

このように共有者が増えることで、所有者全員の同意が必要な場面が増え、意思決定や財産の管理が難しくなります。

 

2. 意思決定が停滞するリスク

不動産を売却したり、大規模な修繕を行ったりする場合には、原則として全共有者の同意が必要です。
共有者が増えれば増えるほど、それぞれの考え方や生活状況が異なるため、利害の対立構造も複雑化しがちで話し合いがまとまらないことも少なくありません。

 

軽微な修繕や保存行為は単独でも可能ですが、売却や大きな改修工事など重要な意思決定は全員の合意を要するため、合意形成が非常に困難になる場合があります。

 

3. 二次相続によるさらなる複雑化

夫の相続発生後に妻が持分を含めて不動産を所有していた場合でも、妻が亡くなったときには、二次相続により持分がさらに細かく分かれてしまいます。
時間が経過するほど相続人の数が増え、権利関係が一層複雑になり、売却や活用がほぼ不可能になるケースも珍しくありません。

 

こうした事態になると、資産価値を維持することも難しくなります。

 

4. 具体的に想定されるリスク

法的リスク:

共有者全員での合意が得られない場合、共有物分割を求める調停や訴訟を起こされる可能性があります。
訴訟になれば最終的には裁判所により現物分割、賠償分割、そして競売分割のいずれかを命じられることになります。

経済的リスク:

共有者が多いとその不動産を単独で活用することが難しいことから、一般的に不動産の評価額は下がってしまいます。
そのため市場に出しても希望する価格で売却できないことがあります。

家族関係リスク:

多数の相続人による共有状態を放置すればするほど、いずれ意見対立が生じて家族間・親族間の関係が悪化し、協議・交渉による穏便な解決策がとれなくなるリスクが高くなります。

 

5. 生前に取るべき主な対策

現状の確認

まずは夫婦の共有名義不動産をすべてリスト化し、持分割合やローン残高、担保設定の有無などを確認します。

単独名義への変更

贈与税が発生する場合がありますが、不動産を夫婦いずれかの単独名義に変更することで配偶者控除(居住用不動産2,000万円までの特例)や相続時精算課税制度を活用できる場合もあります。
事前に税額や登記費用を試算し、慎重に判断します。

遺言書の作成

遺言書を作成する際には誰がどの持分を相続するのかを明確に記載し、代償分割の方法や予備的な指定も盛り込むことで、争いを未然に防ぎます。

生前売却・住み替え

共有状態のまま売却し、現金化することで、相続時の分割を容易にします。

家族信託の活用

信頼できる受託者に管理や処分の権限を与え、二次相続まで見据えた計画的な管理を行います。
ただし、設計内容によっては贈与税や不動産取得税、登録免許税が発生する場合があるため、専門家による詳細な検討が不可欠です。

まとめ

夫婦間の共有名義不動産は、一見すると安心なように思えても、相続発生後には複雑な権利関係や意思決定の停滞、資産価値の低下など、さまざまな問題が生じる可能性があります。
これらのリスクは、生前にしか効果的な対策を講じることができません。

 

札幌、東京で相続・生前対策相談の実績豊富な「弁護士法人リブラ共同法律事務所」では、不動産の法務・税務の両面に配慮した解決策をご提案しています。

また、相続登記が必要な場合には相続相談経験豊富な司法書士を、相続税申告や生前対策の検討が必要な場合には税理士をそれぞれご紹介させていただくことも可能です。
ご家族の将来の安心のためにも、早めのご相談をお勧めいたします。

 

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