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遺産分割調停で相続人間の合意が得られずに調停が不成立になってしまった、という場合には手続は自動的に審判に移行します。
遺産分割審判は、当事者の合意形成を促す調停とは性質が大きく異なり、最終的には裁判官が法律に基づいて強制的に遺産の分け方を決定する手続です。本記事では、遺産分割審判とは何か、調停不成立後の流れと注意点について、弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
遺産分割審判とは、家庭裁判所の裁判官が職権で遺産の分割方法を決定する手続です。
調停が話し合いによる解決を目指すのに対し、審判では裁判官が一方的に判断を下すため、相続人の意向が必ずしも反映されるとは限りません。
遺産分割調停と審判の主な違いは以下の通りです。
| 遺産分割調停 | 遺産分割審判 |
| ✅成立には相続人全員の同意が必要 | ✅裁判官が職権で決定、相続人の合意は不要 |
| ✅調停委員が相続人間を仲介、裁判官も関与 | ✅裁判官が聴取を担当、証拠から直接判断 |
| ✅期日に相手方当事者と顔を合わせることがない | ✅期日で相手方当事者と同席することもある |
| ✅相続人の合意に応じた柔軟な解決が可能 | ✅法定相続分を基本とする形式的な分割になることが多い |
調停では「この不動産は長男が相続し、預貯金は次男が相続する」といった柔軟な分け方も可能ですが、審判では法定相続分に基づいた機械的な分割になることが多くなります。

遺産分割調停が不成立になった場合、手続は以下のように進みます。
調停が不成立となった時点で、事件は自動的に審判手続に移行します。
そのため改めて審判の申立てをする必要はなく、調停手続で提出された証拠や作成された記録がそのまま審判でも引き継がれます。
審判に移行すると、家庭裁判所が審判期日を指定し、相続人に期日への呼出状が届きます。
審判期日は約1か月から1か月半程度おきに数回開かれ、裁判官が直接当事者の主張を聴いたり、追加の証拠提出を求めたりします。なお、話し合いによる解決の余地が生じた際は調停調書作成による解決が図られることもあります。
裁判官は提出された証拠や当事者の主張を検討し、必要に応じて追加の調査や鑑定を命じることがあります。不動産の評価額について争いがある場合は、家庭裁判所が不動産鑑定士を選任したうえで鑑定が実施されることもあります。
裁判官が審理を終え分割内容を決定したときは、遺産分割審判書が作成され、各相続人へ送達されます。
審判に不服がある相続人は、審判書を受け取った日から2週間を経過する前に即時抗告という高等裁判所への不服申立てを行うことができます。即時抗告がなければ審判は確定し、審判書が法的な拘束力を持つようになります。そのため、遺産分割協議書が無くても審判書を用いて不動産の登記や預金口座の解約など、確定した内容に従った相続手続ができるようになります。

審判期日の呼び出しを無視したり、審判で決定された内容に従わないときには、以下のようなリスクが生じます。
審判期日に正当な理由なく欠席しても、手続は進行します。最終的には裁判所が分割内容を決定するため、調停と異なり「不成立」になったり、「なさず(※)」で終了することもありません。
その代わり、期日に出席しないことで自分の主張を述べたり、主張を裏付ける証拠の提出機会を失い、他の相続人の主張のみに基づく判断が下される可能性が高くなりかねません。
(※)調停手続の「なさず」とは
遺産分割などの家事調停手続は、話し合いがまとまった際には「調停成立」して終了しますが、それ以外の終了の仕方のひとつが「調停なさず」です。
遺産分割事件においては、そもそも遺産分割の前提事実が争われており調停委員会が別の訴訟で解決すべきと判断する場合、例えばある相続人がすでに相続財産を勝手に名義変更していて対象となる財産が存在せず、まずは不当利得返還請求訴訟や遺産確認訴訟を起こすべき事案などでは、申立人による「取下げ」(家事事件手続法第273条)を促されるほか、調停委員会自ら「調停をしない」との判断をする、いわゆる「調停なさず」で手続を終了させることがあります(家事事件手続法第271条)。この「取下げ」や「なさず」の場合は審判手続への移行はありません。
審判が確定すると、その内容に法的拘束力が生じます。
そのため、例えば審判で「不動産を売却して代金を分配する」と決定されたにもかかわらず、不動産を占有している相続人が立ち退きを拒否した事案だと、審判書を債務名義として強制執行を申立てることが可能になり、当該相続人は立ち退きを強制されることがあります。
他にも確定した審判を無視することで、以下のようなリスクが生じます。
✅ 遅延損害金の発生
✅ 相続人間の関係のさらなる悪化
✅ 解決までの期間の長期化
審判の内容に納得できない場合でも、無視するのではなく、即時抗告などの正当な手続で対応すべきです。

審判手続では、以下の点に注意が必要です。
裁判所が遺産分割内容を決定する審判では、原則として法定相続分に基づいた分割が行われます。
「他の相続人になされた生前贈与分を持ち戻してほしい」「長年介護をしたから多く相続したい」という希望があっても、それぞれ特別受益や寄与分として法律上認められる要件を満たさない限り考慮されませんし、法律上決められた範囲を超えて相続分に反映されることもありません。
審判は裁判官が証拠に基づいて判断する手続です。そのため、当事者の主張についてはそれを裏付ける客観的な証拠がなければ、どれだけ口頭で説明しても認められません。
特別受益や寄与分を主張する場合は、通帳の記録、診断書、介護記録など、具体的な証拠の提出が不可欠です。
審判に不服がある場合、即時抗告は審判書を受け取った日から2週間以内に行わなければなりません。
この期限を過ぎると、どれだけ不当な内容であっても審判が確定してしまいます。

遺産分割審判を少しでも有利に進めるには、対応のポイントを押さえておくことが重要です。
審判で有利な判断を得るには、事案に応じて以下のような証拠を集めておく必要があります。
✅ 預貯金の取引履歴:使途不明金の存在を主張したい場合
✅ 不動産の評価資料:不動産の評価方法や金額について揉めている場合
✅ 生前贈与に関する資料:他の相続人の特別受益の存在を主張したい場合
✅ 介護や看護の記録:寄与分を主張したい場合
これらの証拠を体系的に整理し、説得力のある主張を構築していくことが審判での対応の基本かつ重要なポイントです。
審判での主張は書面で残る形で、つまり主張書面を裁判所に提出することで行います。主張書面内では法律の専門用語を誤用せず、主張と証拠の関係を明確に示す必要があります。
調停が不成立になりそうな段階、あるいは審判に移行した直後に、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。審判で行うべき主張を整理し、必要な証拠を準備する時間を確保できるようにしましょう。

審判では、限られた時間の中で裁判官に主張を理解してもらう必要がありますが、法律の専門家である弁護士を代理人に立てておけば、皆様の主張の法律的な論点を整理し、証拠と結びつけて説得力のある説明を行います。特別受益や寄与分などが争点になる事案でも、該当する民法の規定を正確に理解している弁護士が、要件を満たす主張を構築します。
審判の内容に不服がある場合は即時抗告をするかどうかを判断する必要がありますが、即時抗告には審判書受領から2週間という期間制限があります。弁護士にご依頼いただければこの判断を迅速に行い、抗告理由書の作成・提出もお任せいただけます。

弁護士法人リブラ共同法律事務所は相続案件のご相談1,500件以上(2026年2月現在)の実績を有し、遺産分割審判についてもこれまで多くのご相談、ご依頼をお受けしてまいりました。
札幌2拠点(札幌駅前・新札幌)、東京2拠点(吉祥寺・立川)の計4拠点から、WEB会議システムを活用し全国の家庭裁判所での審判手続に対応しております。
審判に先立つ調停手続、その申立ての準備といった各段階で多数の経験を積んできた弁護士による、裁判官の判断傾向を踏まえた戦略的な対応をいたします。
当事務所の相続相談は初回は50分間無料です。お悩みを詳しくお伺いし、審判手続の見通しや取るべき対応についてご説明いたします。

✅遺産分割審判は、裁判官が法律に基づいて強制的に遺産の分け方を決定する手続で、調停とは異なり相続人の合意がなくとも、証拠に基づいた判断が下されます。
✅審判を無視することはできず、確定した審判には法的拘束力があります。
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、遺産分割審判に関する豊富な経験と専門知識を持つ弁護士が、依頼者に有利な審判結果を得るための全面的なサポートを提供いたします。調停が不成立になった方、審判手続きでお困りの方は、まずは当事務所の初回無料相談をご利用ください。現在の状況を詳しくお伺いし、最善の対応策をご提案いたします。
