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「遺言書で指定された遺言執行者が突然連絡を絶った」、「職務を放棄して何も手続を進めてくれない」、こうしたトラブルのご相談を相続人の方からいただくことがございます。
遺言執行者の職務放棄により相続手続が停滞すると、不動産の名義変更や預貯金の解約ができず、相続人のみなさんに深刻な影響を及ぼします。
本記事では、遺言執行者が職務を放棄した時の緊急解決策について、相続トラブルを多く解決してきた弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続を行う人のことです。
被相続人が遺言書の中で特定の人を遺言執行者として指定するケースが多く、相続人でない親族が選ばれることも、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることもあります。

遺言執行者の権限は遺言に書かれている内容にのみ及びます。実際に遺言により権限が与えられる行為の例として以下のものがあります。
✅ 債権の回収や債務の弁済
✅ 不動産の名義変更手続
✅ 預貯金の解約と分配
✅ 認知の届出
✅ 排除・排除の取消についての家庭裁判所への申立て
遺言執行者は遺言にない相続財産の分配や遺産分割協議を取り持つことなどは行いません。
遺言執行者に就任した者は上記の権限だけでなく、民法に定められた以下のような義務を負います。
✅ 執行者に就職した旨と遺言内容の相続人への通知(民法第1007条)
✅ 相続財産目録の作成と相続人への交付(民法第1011条)
✅ 相続人・受遺者への相続財産の引渡し(民法第1012条第3項、第646条)
✅ 執行終了時、および相続人から請求があったときの執行状況の報告(民法第1012条第3項、第645条)
✅ 善管注意義務(民法第1012条第3項、民法第644条)

遺言執行者の職務放棄といわれるのは主に上記の義務を怠っている状態を指し、例えば以下のようなパターンがあります。
✅ 遺言執行者に就任したが何も手続きを進めない
✅ 連絡が取れなくなり所在が不明になる
✅ 財産目録を作成せず相続人に報告しない
✅ 不動産の名義変更や預貯金の解約を放置する
✅ 相続人からの問い合わせに応じない
特に遺言執行者に親族が就任している場合、相続人間の感情的な対立を抑えられず職務の遂行が困難になり、結果的に放棄に至るケースが見られます。
なお、遺言により、あるいは遺言により委託された第三者によって遺言執行者に指定された者は、就任を承諾するか拒絶するか選択することが出来ます。
そのため、上記のように就任を承諾した者の義務懈怠といえるパターン以外でも、
✅ 遺言執行者に指定されたが就任を拒絶した
ために相続手続が停滞するケースや、そもそも遺言作成から時間が経っており
✅ 遺言者よりも先に遺言執行者に指定されている人が亡くなっていた
という問題が生じることもあります。
遺言執行者が職務を放棄すると、相続手続に重大な支障が生じます。
遺言執行者が指定されている場合、相続人は独自に相続手続きを進めることができません(民法第1013条)。
不動産の名義変更も預貯金の解約も遺言執行者の権限で行う必要があるため、執行者が動かなければ全ての手続が停止してしまいます。
相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。
遺言執行者が職務を放棄し、財産の調査や評価が進まなければ、適切な相続税申告ができず、延滞税などのペナルティが発生するリスクがあります。
遺言執行者が職務を放棄したまま放置されると、相続財産の適切な管理ができなくなります。
その結果、不動産の固定資産税の支払いや建物の維持管理が滞り、財産価値の低下や近隣トラブルにつながる可能性があります。

遺言執行者の職務放棄が疑われる場合に取り急ぎ取るべき対応は以下の通りです。
後述する解任の申立ての準備として、職務放棄の事実を立証するため、以下の証拠を集めます。
✅ 遺言執行者への連絡記録
✅ 相続手続が進んでいない事実を示す資料
(被相続人の名義のままになっている登記簿など)
✅ 他の相続人の証言
これらの証拠は、解任を申し立てる段階で重要な役割を果たします。申立ては相続人の代表者おひとりで行うことが出来ますが、他の相続人の同意を得る必要があります。準備段階から相続人間で協力することで申立てもより説得力を増すものになりますので、可能であれば他の相続人とも情報を共有し、共同で対応することが効果的です。
証拠収集の際には法律や実務に関する専門的な知識も必要になりますので、この段階から弁護士へのご相談も視野に入れることをお勧めいたします。
民法では、遺言執行者が任務を行ったときその他正当な理由がある場合に、利害関係人から家庭裁判所に遺言執行者解任の審判をしてもらうよう請求できる旨の定めがあります(民法第1019条第1項)。
職務放棄はまさにこの「任務を怠った」場合に該当し、解任請求の正当な理由となりますし、遺言執行者が適切に職務を行うことで相続財産を得られる相続人は審判の申立ができる「利害関係人」に該当します。
遺言執行者の解任請求は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをすることで行います。相続人による職務放棄を理由とした解任申立ての際に必要となる一般的な書類は以下の通りです。
✅ 遺言執行者解任審判申立書
✅ 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本)
✅ 遺言執行者の住民票
✅ 遺言書の写し
✅ 申立人の戸籍謄本
✅ 利害関係を証明する資料
:申立人が被相続人の相続人であることが分かるだけの戸籍謄本
✅ 職務放棄の事実を示す証拠
申立てが受理されたあとは、裁判所による遺言執行者からの聴き取りも経て解任に「正当な理由」があるかどうかが判断されます。そのため、事案にもよりますが解任の審判までは通常2~3ヶ月程度の期間を要することも多いです。
上述の通り、もし遺言執行者の解任が相当な事案であっても、家庭裁判所への申立てから法的効力を有する解任の審判書が得られるまでには一定のタイムラグが生じます。その期間中に遺言執行者が相続財産を横領するおそれがある、不動産や株式などの価値が急落するおそれがあるなどの利害関係人への損失が生じかねない事情がある場合には、事案に応じて「遺言執行者の職務執行停止」や「遺言執行者の職務代行者の選任」を解任と一緒に申し立てることが出来ます。
遺言執行者が解任された後は、改めて相続人だけで遺言に従った相続手続を進めることができますが、家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を求めることも可能です。後者の方法をとる際には弁護士や司法書士などの専門家を選任することも可能です。

遺言執行者が自ら辞任を申し出た場合も、適切な対応が必要です。
遺言執行者は、「正当な事由」がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(民法第1019条第2項)。すなわち、単に「執行業務が思ったより面倒だった」という程度では辞任は認められない可能性が高く、実務上は
✅ 病気やケガ
✅ 遠方への転勤や長期出張
などの事情がある場合に辞任することができるようになっています。
遺言執行者が辞任した場合も、新たな遺言執行者を選任することができます。選任申立から執行者が決まるまでの間は相続手続が停滞するため、速やかな準備が重要です。
遺言執行者の職務放棄問題は、法的手続が複雑で専門知識が必要です。
家庭裁判所への申立書の作成から審判まで、全ての手続をサポートします。必要な証拠の収集方法や、裁判所での主張の仕方について、的確なアドバイスを提供いたします。
弁護士が新たな遺言執行者に就任し、滞っていた相続手続を速やかに完了させることも可能です。公正かつ適切な遺言執行により、相続人間の紛争を防止します。

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相続問題でお困りの方のために、初回50分間の無料相談を実施しています。
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遺言執行者が職務を放棄しているときには、家庭裁判所への解任請求を検討すべきケースもございます。ただし、手続には専門的な知識と適切な証拠収集が必要で、個人で迅速な対応をすることは困難です。
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、遺言執行者の解任請求から新たな執行者の選任まで、一貫したサポートが可能です。遺言執行者の職務放棄でお困りの方は、一人で悩まず、まずは当事務所にご相談ください。初回無料相談で、現在の状況に応じた最善の解決策をご提案いたします。
