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相続対策というと、不動産活用や生前贈与を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、生命保険も「納税資金の確保」「遺産分割の調整」「相続税の節税」という三つの役割を果たす、非常に有効な手段です。
生命保険金は民法上「受取人固有の財産」とされており、遺産分割協議を経ずに受け取ることができます。
こうした特性は、相続発生後の資金確保や円滑な遺産分割にも大きく役立ちます。そのため相続手続や相続税申告をご検討中の方においても、早めの確認が重要です。
相続税は原則として現金での一括納付が必要です。
近年はクレジットカードでの納付やe-Taxを利用した納付も利用できるようになりましたが、まとまった資金を確保しておかないとならない点は変わりません。
また延納や物納といった制度もありますが、これらは厳しい条件があり、誰もが利用できるわけではありません。
そのため、特に遺産の多くが不動産で現金が少ない場合、納税資金の不足が相続人にとって深刻な問題となります。
生命保険であれば、被相続人の死亡後、比較的短期間で保険金を受け取ることができます。
また、被相続人名義の銀行口座が凍結されても影響を受けず、受け取った資金を納税や葬儀費用などにすぐに充てられる点は、大きな安心材料となります。
不動産や自社株式など、均等な分割が難しい財産が多い場合には、「誰が何をどの程度相続するか」という問題から不公平感や不満が生じやすくなります。
このような場合に、特定の相続人を生命保険の受取人に指定しておくことで、その保険金を他の相続人への代償金として活用できます。
これにより、相続人間の公平性を保ちながら、円滑な遺産分割を実現することが可能です。
ただし、保険金は受取人の固有財産であり、法的に他の相続人へ分配する義務はありません。
公平な分割を確実に行うためには、遺言書で明確に記載するか、生前に家族全員で合意しておくことが望まれます。
生命保険金には、「500万円 × 法定相続人の数」という相続税の非課税枠があります。
例えば法定相続人が3人いる場合には、1,500万円までの保険金が相続税の課税対象から除外されます。
この非課税枠を活用すれば、相続税が課される財産を減らすことができ、結果として税額を抑えることができます。
特に遺産総額が多く、相続税率が高くなりやすい場合には、節税効果がより大きくなります。
生命保険の契約者(保険料負担者)・被保険者(被相続人)・受取人の組み合わせによって、受け取った保険金に課税される税目が変わります。
契約者=被保険者の場合
(例:契約者=妻、被保険者=妻、受取人=子)→ 相続税
契約者、被保険者、受取人がすべて異なる場合
(例:契約者=夫、被保険者=妻、受取人=子)→ 贈与税
契約者≠被保険者で契約者=受取人の場合
(例:契約者=夫、被保険者=妻、受取人=夫)→ 所得税(一時所得など)
相続対策で生命保険を利用する場合には、この契約形態を誤らないことが非常に重要です。
生命保険金は原則として遺産分割の対象には含まれません。
ですが、あまりにも受け取る保険金があまりに高額であったり、遺産相続に対して保険金の比率が高かったりと、一人の相続人が受け取ることで他の相続人との間で著しい不公平を生じさせたと評価される場合には、生命保険金が受取人の特別受益となり、持ち戻しの対象となることがあります。
持ち戻される保険金は相続開始時の相続財産に合算され、そのうえで具体的な相続分が再計算されることになります。
また、生命保険金は遺留分の算定の基礎にも含まれません。
しかし上記と同様に、あまりにも保険金により他の相続人との間で著しい不公平を生じさせるケースだと、他の相続人からの遺留分侵害額請求が認められる可能性可能性があります。
そのため、相続人に保険金を受け取らせる場合には、保険金額や家族構成、保険料の負担状況を踏まえて慎重に設計することが必要です。
さらに、事前に遺言書を作成し、家族への説明を行っておくことが望ましいでしょう。
生命保険は、納税資金の確保、遺産分割の調整、相続税の節税という三つの目的を同時に達成できるので生前にとれる対策として有効な方法です。
ただし、契約形態や受取人の設定を誤ると、期待した効果が得られないこともあります。
札幌、東京で相続・生前対策相談の実績豊富な「弁護士法人リブラ共同法律事務所」では、不動産の法務・税務の両面に配慮した解決策をご提案しています。
また、相続登記が必要な場合には相続相談経験豊富な司法書士を、相続税申告や生前対策の検討が必要な場合には税理士をそれぞれご紹介させていただくことも可能です。
ご家族の将来の安心のためにも、早めのご相談をお勧めいたします。