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「被相続人の家を残したい相続人と売りたい相続人で対立している」
「ある相続人が被相続人の土地を独り占めしようとしている」
「相続人間で不動産の評価方法で揉めている」
不動産の相続は、弁護士にお寄せいただく相続のご相談の中でも特に紛争化しやすい分野の一つです。土地、家屋といった不動産は価値が高く、またその性質上現金のような分割が難しいため、上記のように相続人間で意見が対立することがよくあります。
そこで本記事では、相続案件に注力する弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、不動産を相続する際の紛争トラブルの具体例や解決までの流れ、弁護士に相談するメリットについて詳しく解説します。
遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要です。ですが不動産については以下のように相続人間で意見が一致せず、家庭裁判所での調停や審判手続、訴訟にもつれ込んでしまうケースがあります。
✅ 不動産の評価額を巡る争い
不動産は市場価値が変動しますしその評価方法も複数あるので、相続人間で評価額について意見が分かれることがあります。話し合いが平行線になる場合は不動産鑑定士に依頼して評価額を算出してもらうことが考えられますが、その結果に納得しない相続人がいて対立が長引いてしまうということも少なくなく、調停や審判手続で解決が図られることもあります。
✅ 不動産の分割方法を巡る争い
不動産はそのままで均等に分割することが難しく、売却して分け合う、一人が取得して他の相続人に代償金を支払う、相続人の共有にする、といった方法が取られます。このようにいくつも選択肢がある中で、具体的に協議を試みても意見が一致しないケースが多いです。
特に被相続人の自宅に被相続人の配偶者や子が住み続けているようなケースでは、配偶者居住権や寄与分の主張がなされてさらに複雑な問題になってしまうこともあります。
✅ 相続人間の感情的な対立
価値の高い不動産が相続財産の大半を占めるといったケースも多く、誰がその不動産を引き継ぐかを決める場面では「被相続人が生前に特定の相続人を優遇していた」「家族間で過去の確執がある」など、それぞれの相続人が不動産の取得を強く求めるあまりに感情的な対立が表面化してしまい、協議が進まないことがあります。
✅ 相続人の人数や関係が複雑な場合
「被相続人より先に亡くなっている相続人がいて代襲相続が発生している」「被相続人の前妻の子がいる」といった事案はもちろん、不動産については「実は被相続人の亡親の名義のままだった」といったような事案もあります。これらのケースでは相続人の人数が多かったり、普段から付き合いのない相続人がいたりするため、ただでさえ分割の難しい不動産をどう分けたらいいか中々決まらない、という問題が生じがちです。連絡を取っても遺産分割に協力してくれない相続人がいるようなケースでは、調停等の法的手続に頼らざるを得なくなります。
不動産の遺産分割方法について遺言書が残されていれば、遺産分割協議を経ずとも相続登記などの相続手続を行うことが可能です。
ですが、特に不動産以外の相続財産が少ないようなケースでは、不動産を一人に相続させる内容の遺言を作成した結果、他の相続人の遺留分への配慮がなされておらず紛争化してしまうことがあります。遺留分を有する相続人は遺留分侵害額請求をすることができますが、協議に決着がつかなければ家庭裁判所での調停や審判を通じた解決が必要になります。
相続にまつわる紛争といえば、ここまで見てきたような「調停・審判、訴訟にもつれ込んでまで遺産の取り合いになる」場面が一般的に想像されがちですが、不動産の相続の場合は他にも問題が潜んでおり、別のアプローチで解決を図る必要が生じるケースがあります。
✅ 相続税が支払えない
特に地価の高い地域にある不動産を相続するケースや、複数の不動産を有する地主の相続のケースなど、相続財産全体の額が大きいときには相続税の負担が問題になることがあります。相続税は現金で納付するので、せっかく不動産をそのまま相続しても納税資金が手元になければ手放して得た売却金を充てなければならなくなる可能性もあります。相続財産の総額が基礎控除を超えそうな際には、なるべく生前に生命保険や生前贈与などを活用してもらう、財産の整理をしてもらう、といった対策を被相続人と話し合っておくことが大切です。
✅ 不動産を相続したい相続人がいない
「実家近くに住んでいる相続人がいない」「田舎の山林や農地を取得しても活用できない」「固定資産税を負担したくない」などの理由で、相続人間で不動産の押し付け合いになってしまい協議が進まないケースもあります。こうした事案では相続放棄や自治体への寄付、相続土地国庫帰属制度の活用といった対応についても相続人間で話し合わないといけなくなります。
不動産の相続が問題になりやすい事例については、こちらの記事もご覧ください。
>>『相続財産に不動産が含まれている場合の問題点』
不動産の相続について争いが長期化しているときに注意しなければならないのが、「相続登記の期限」です。誰の名前で相続登記をするか決まっていなくても以下については留意しておく必要があります。
2024(令和6)年4月1日からは、相続登記の申請が義務化されることになりました。
具体的には、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記をしなければならず、正当な理由なく相続登記を怠った場合には10万円以下の過料に処されるようになります。
ここでいう「自己のために相続の開始があったこと」を知った日は「被相続人の死亡」を知った日、となるのが一般的です。また法的には相続開始とともに遺産は暫定的に相続人の共有となるので死亡を知ると同時に相続財産の「所有権を取得することを知った」といえますが、相続財産に不動産が含まれていることを後で知ったというようなケースであれば起算日は「相続財産に不動産が含まれていることを知った日」にずれることになります。
「不動産の相続登記が必要なことは分かっていても、だれが取得するかで相続人間で争っているため登記が出来ない…」という状況のまま3年の期限が迫ってしまったときは、「相続人申告登記」という手段があります。
相続人申告登記は相続登記の義務化とともに新設された制度で、相続の開始と登記名義人の相続人である旨を法務局に申告して行う登記です。この申告をした相続人については相続登記の義務が免除されますので、上記の期限を経過しても過料の対象とはなりません。
相続登記の義務化についてはこちらの記事もご覧ください。
>>『相続登記が義務化されたらどうなる?』
相続財産に不動産が含まれており、相続人間で誰がどのように相続するか揉めてしまった場合の対応の流れは以下の通りです。
①遺産分割協議の実施
相続人全員で話し合い、不動産の分割方法について合意を目指します。
全員で合意できた際には、相続登記のために遺産分割協議書を作成する必要があります。
もし協議がまとまらない場合、不動産の評価や分割方法について弁護士や不動産鑑定士といった専門家に相談のうえ進めていくと良いでしょう。
②家庭裁判所への調停申し立て
相続人だけでの話し合いで解決できない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。各相続人が単独で、残りの相続人全員を相手方として申し立てることが出来ます。調停期日では調停委員が仲介役となり、解決を図ります。各相続人が、それぞれの主張に基づいた書面作成や証拠の収集が必要になる場合もあります。
③審判や訴訟
調停でも解決しない場合、審判手続に移行して裁判官が判断を下すことになります。もし審判に不服があれば2週間以内に不服申し立て(即時抗告)をすることが出来ます。
遺産分割調停・審判についてはこちらもご覧ください。>>『遺産分割調停と審判』
また、もし遺産分割の前提となる事実(相続人の地位や範囲、遺産の範囲など)に争いがあり、調停で話し合っても解決の見込みが薄い場合は、調停の前にこの前提事実について裁判官の判断を求めて訴訟を提起すべきケースもあります。
✅ 法律的な観点からアドバイスを受けられる
不動産の相続は最終的に調停等の法的手続で解決を目指すことも多く、その中では調停委員や裁判官がどのように争点を整理したり落としどころを提案したりするのか、合意の見込みがなければどのような判断を下すか、といった見通しを立てながら意見の対立する相続人との交渉をしていくことがスムーズな解決への近道といえます。遺産分割協議や調停対応等を弁護士にご依頼いただければ、手続を熟知した専門家から法的な観点からアドバイスを受けながら方針を固めていくことができます。
✅ 手続の負担を軽減できる
遺産分割協議を始める前の相続人調査や財産調査、協議がうまくいかなかったときの家庭裁判所へ調停や審判の申立て、期日間の証拠収集や書面作成、分割内容決定後の不動産の相続登記や売却手続、相続税の納付…といったように、不動産を相続するまでには様々な場面で異なる手続が必要になってきます。
「弁護士には裁判所での手続しか依頼できないのでないか」というお声をいただくこともありますが、実際には調停や審判の対応はもちろん、相続人や相続財産の調査段階から不動産の売却や名義変更の手続まで任せていただけます。弁護士法人リブラ共同法律事務所では、個々の事案に応じてどのような手続が必要になるかアドバイスのうえ、税理士や司法書士と連携しながら相続税や相続登記についてのサポートや、不動産会社と連携して不動産の査定や売却手続についてのサポートも提供しております。
✅ 感情的な対立を防げる
遺産分割協議は、きょうだい、親子、おじ(おば)と甥(姪)、と親族同士での話し合いになるので、つい互いに感情的になってしまい冷静に話ができなくなってしまうということもあります。また「主張したいことはあるが親族とお金の話はしたくない」「仲の良くない相続人がいて話し合いをするのに気が進まない」といったことで妥協して不利な条件を受け入れてしまいそうになることもあります。
そのような状況にあるときこそ弁護士に交渉をお任せいただければと思います。弁護士とともにご自身の希望を冷静に整理し、弁護士が法的根拠に基づき代理人として他の相続人との協議を行いますので、相手方と直接顔を合わせず、かつわだかまりを極力残さずに解決を目指すことができます。
当事務所では、不動産相続に関する豊富な経験を持つ弁護士が、以下のようなサポートを行います。
【紛争に関するサポート】
●遺産分割協議の代理(相続人間の交渉サポート)
●遺産分割調停・審判の手続代理(申立、書面作成、期日出頭等)
●遺留分侵害額請求の代理(請求側・被請求側)
【相続手続に関するサポート】
●相続人・相続財産の調査
●使途不明金の調査
●相続手続(預金解約、保険金請求など。登記手続など一部の手続については連携する専門家や業者様をご紹介いたします)
●不動産売却のサポート(不動産会社をご紹介し査定書の取得や売却までの手続をお手伝いいたします)
【生前対策に関するサポート】
●遺言作成のサポート
各サポート内容、料金についてはこちらもご覧ください。>>『弁護士費用』
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、不動産を所有されている方の遺言書作成等の生前のご対策、および不動産の相続開始後の相続人間の紛争のいずれについても多数の案件を取り扱ってきた実績がございます。
不動産相続のトラブルは、相続財産に不動産がない場合と比べて感情的な対立や関連する法律や制度の複雑さが絡み合い、解決が難しくなる傾向にあります。当事務所では、経験豊富な弁護士が皆様の立場に寄り添い、最適な解決策をご提案しますので、不動産の相続トラブルでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。