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「亡母の遺産を分け合いたいが、母と同居していた姉が遺産の内容を教えてくれない」
「施設に入っていた亡父の預金を管理していた叔父が、通帳を見せてくれない」
…といったお悩みはございませんか?
相続に関してご相談をお受けしていると、相続人の一人が故人の財産を管理しており、他の相続人が遺産のことを知りたくても教えてもらえない、というお悩みを耳にすることがあります。
このように相続財産を管理している方の協力が得られない場合、隠された財産が使い込まれていないかが懸念されるところです。そこで、こちらでは札幌市近郊で多数の相続問題を取り扱ってきた弁護士が、他の相続人が財産を開示してもらえない場合に取りうる手段につき、ご説明いたします。
そもそも、相続開始から遺産分割が完了するまでの被相続人の遺産は、相続人全員の共有財産とされます。そのため、財産の処分行為(売却、担保設定など)・変更行為(農地を宅地に変更するなど)については相続人全員の同意がなくてはなりません。
ですが、一人の相続人が他の相続人に対して遺産の内容を開示しなければならない法律上の義務はありません。そのため、被相続人の財産を管理していた相続人が遺産を開示しない場合は、他の相続人は自力で調査しなければなりません。以下では、財産の種類に応じて説明いたします。
財産を管理している相続人からすれば、預貯金は最も手を付けやすい財産といえるでしょう。
通帳を見せてもらえず入出金の状況が分からなくても、金融機関名・支店名・口座番号が分かっていれば、自身が口座名義人(被相続人)の法定相続人であることを証明できる戸籍謄本および身分証明書を窓口へ持参することで、相続開始日の残高証明書や取引明細を取得することが出来ます。取引明細から死亡前の不自然な引き出しや送金の流れを辿ることで相続人による財産の使い込みの証拠とできるだけでなく、金融機関が窓口で口座名義人の死亡を確認することで、口座が凍結されて入出金ができなくなるため、これ以上の使い込みの防止にもなります(民法改正により、一定額については遺産分割前の仮払いが認められるようになりましたが、払い戻された分は後の遺産分割で清算されます)。
もし、取引していた金融機関が不明な場合は、被相続人の最後の居住地近くに支店があるなど、思い当たる金融機関に対して口座の有無の照会をかけていかなければなりません。
被相続人の実印や権利証(登記識別情報通知書)を管理している相続人がいた場合は、被相続人の生前にこれらを用いて勝手に不動産を売却して売却金を自分のものにしてしまうケースがあります。
一方、被相続人の死後に被相続人名義の不動産を売却するには、まず不動産の名義を被相続人から相続人の名義に変更することが必要です。しかし、相続人全員の同意なしに特定の一人の名義への変更はできないため、少なくとも不動産全部を処分されることはありません。もっとも、それぞれの相続人による、法定相続分に応じた持分の売却は自由にできるため、買い受けた相手(一般の方が他人と共有になる不動産を購入することは考え難く、相手は共有持分買取業者となることが多いです)と交渉しなければならない事態になるおそれはあります。
被相続人の不動産につき、被相続人と同居していたなどして権利証(登記識別情報通知書)を持っている相続人が情報を開示してくれないときには、まずは市町村役場で固定資産税課税台帳(名寄帳)を取得して不動産の「地番」や「家屋番号」を調べます。名寄帳には、その市町村にある資産のみが記載されますので、被相続人が複数の市町村に不動産を所有していたときは、それぞれの市町村で同様の手続きを取る必要があります。そして、名寄帳から地番・家屋番号が判明したら、法務局で不動産登記事項証明書を取得します。登記事項証明書については、名寄帳とは異なり最寄りの法務局で遠方の不動産のものであっても取得することが可能です。
遺産の使い込みには、相続人の一人が被相続人の加入する生命保険を勝手に解約して解約返戻金を受け取っているケースもあります。
たしかに、被相続人の生命保険の保険金の受取人が一人の相続人に指定されている場合には、保険金はその相続人の固有の財産となり相続財産とはならないのが原則です。しかし、裁判例においては、相続人の一人が保険金を受け取ることで他の相続人との間で著しく不公平な結果となってしまう場合があることを考慮し、「保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮」したうえではありますが、受け取った保険金を特別受益として取り扱い、残りの預金等の相続において相続分を調整する例外的な取り扱いを認めています。また、保険金の受取人が契約者である被相続人本人とされている場合も多く、このときは各相続人が法定相続分に従い保険金を受け取る権利を相続します。そのため、保険金の受取人が誰であるかに関わらず、被相続人の保険については調べておく必要があり、不自然に解約されていた場合は相続財産の使い込みの問題となる可能性があるのです。
被相続人がどの保険会社とどんな契約をしていたか、いつ解約されたのか、という点を調べるには、保険会社から被相続人宛の郵便物や保険証券が一番の手がかりとなりますが、これらを管理する相続人が開示してくれない場合は、相続人として思い当たる保険会社に1社ずつ照会をかけていくしかありません。ですが、先に預貯金の取引履歴を取得しておくと、保険料の引き落としなどから契約していた保険会社が絞り込めることもあります。
遺産分割協議や協議が上手くいかなかった際の遺産分割調停においては、判明している遺産を対象として相続人間で話し合っていかなければなりません。この場合、財産を開示しない相続人がいると使い込みの問題に発展するケースもありますが、憶測で追及してしまうと相続人間の激しい対立を生んでしまいます。
そのため、他の相続人との遺産分割協議に臨む前に財産調査をしっかり行っておく必要があります。ですが、相続人の一人が遺産の内容を開示してくれない場合は特に手当たり次第に調べていかなければならない場面もあり、調査をしなければならない相続人の方には負担が重くのしかかってくることになります。
こうした問題に対し、弁護士に財産調査をご依頼いただければ、弁護士が戸籍謄本などの必要書類の収集の段階から相続人を代理して進めていくことが可能です。さらに、弁護士に相続問題をご依頼いただいた場合には、弁護士が所属する弁護士会を通じて金融機関や保険会社、行政機関に対して一定の調査を行うことが出来ます。こうした調査を、その根拠条文(弁護士法第23条の2)から、「23条照会」あるいは「弁護士会照会」と呼びます。もっとも、23条照会によって何でも調べられるわけではなく、依頼者から事件を受任しているうえで弁護士会による照会の必要性・相当性の審査に通らないとならず、また弁護士会の審査が通っても照会先の判断で回答がなされないケースもあるため、必要な回答を得るためにどのような照会を行えばよいか、という判断については経験を積んだ弁護士でなければ分からないことも多いです。
当事務所では、日々多数の相続問題のご相談・ご依頼をいただいております。一つ一つの事案は異なっていても財産調査の進め方には共通することもあり、多くのご依頼を通じて得られた経験に基づきスムーズな財産調査を進めていくことが可能です。また、相続人間の協議においても、多くの問題を解決してきた知識や経験をもとに相手方の反論・調停での見通しを考慮した協議を進め、話し合いが上手くいかず調停にもつれ込んでも、ご依頼者様の代理人として法的根拠に基づいた主張や証拠の収集をしていくことが可能です。
財産を隠している相続人がいてお悩みの方は、多数の相続問題を解決してきた弁護士法人リブラ共同法律事務所へぜひご相談ください。
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