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「遺産分割調停を申し立てたのに、相手方が呼び出しに応じない」
遺産分割調停は、相続分を有する相続人全員の参加のもとで遺産の分け方について話し合うことで相続問題の解決を図る重要な手続です。
申立てを受理した家庭裁判所が調停期日を指定し、相手方となっている相続人に呼出状を送付するのですが、相手方である相続人が「関わり合いたくない」「平日に裁判所に出頭する時間が無い」等の理由でこの呼び出しを無視してしまうことがあります。
期日に現れない当事者がいても出席した相続人の意見の聴き取り等の手続自体は行われますが、相続人全員が合意しない限り調停は成立しません。申立人側からすると、せっかく話し合いの場を設けたのに思ったように進まないのでは精神的な負担が増していってしまうのではないでしょうか。
調停の呼び出しを相手方が無視する状況が申立人にもたらす影響の例として、以下が考えられます。
・解決への道筋が見えず、不安な日々が続く
・調停期日で当事者の意見が出揃わず、時間と労力が無駄になる
・相手の態度に対する怒りや失望感が募る
・家族間の溝がさらに深まり、関係修復が難しくなる
遺産分割の内容が決まらなければ、相続手続(相続税の申告、相続登記、口座解約など)が進まないことになります。また調停期日は平日の昼間に指定されますので当事者全員の意見を聞けないまま期日だけ開かれる状態が続けば仕事や他の用事の予定もある方が感じるストレスも大きくなります。そうしたことが積み重なると家族・親族であるはずの相続人間の関係が修復困難なほど悪化してしまうおそれがあります。
遺産分割調停で相手方が呼び出しを無視する場合、以下のような対応が考えられます。
「相続人全員で遺産分割の内容に合意できないなら申し立てた調停手続を取り下げる」、という選択肢があり得ます。もっとも、取り下げを選んだ場合は任意の協議を続けるということになりますが、多くの場合、調停期日にも出てこないような相手方との協議がうまくいく見込みは低いといわざるを得ません。
だからといって遺産分割の内容が決まらない状態が続けば、相続財産の管理責任が不明確になる、不動産の財産価値の低下、相続人自身が死亡し二次相続が発生する、といったさらなる問題の複雑化を招いてしまいます。
調停期日に当事者がそろう見込みがなく、かつ取り下げもしなければ調停は「不成立」となります。
この場合、手続は自動的に遺産分割審判に移行します。審判では、当事者が提出する主張書面や証拠に基づき、裁判所が職権で遺産分割方法について判断を下します。そのため、調停とは違って相手方が呼び出しに応じなくても、審判の手続は進行していきます。
なお、相続財産の分け方自体に争いが無いというケースであれば調停手続中に家庭裁判所が「調停に変わる審判」を出してくれることがあります。
相手方に「どうしても平日昼間は都合がつかない」「体調を崩している」というような事情があって出頭が出来ないようなケースであれば、代理人を立ててもらうよう働きかけるのも一つの手段です。ただし、遺産分割調停などの裁判所での手続で代理人をなれるのは原則として弁護士のみです。
そもそも相手方の行方が知れない(従来の住所・居所を去り容易に戻る見込みがない、など)ようなケースでは、裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。
不在者財産管理人には申立人が利害関係のない自身の親族や不在者の親族などを候補者として挙げることができますが、身近に候補者がいなければ裁判所が弁護士や司法書士などの第三者を選任します。そうして選ばれた不在者財産管理人は欠席している相続人(不在者)の代わりに遺産分割調停に参加することになります。
調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合、弁護士に依頼することで状況が変わることがあります。
例えば、元々相続人間で関わりがなかった場合や、相手方相続人と関係が悪かったようなケースでは調停の申し立てを考えている方から連絡を取ること自体が心理的な負担をもたらしがちです。弁護士にご依頼いただければ代理人として他の相続人への連絡も行いますので、こうした負担も最小限にとどめることが出来ますし、場合によっては相手方にもご依頼前より冷静に対応してもらえるようになることもあります。
他にも、弁護士への依頼には以下のようなメリットがあります。
状況に応じた最適な法的な対応を提案・実行します。例えば、これまでの経過から相手方が調停期日に出頭する見込みが低いと考えられる場合には早期に手続を審判へ移行させ、申立人に有利な結論になるよう代理人として主張・立証することができます。
現状の法的な問題点を指摘することで、相手方の態度を変え協議や調停で解決できる可能性が上がります
当事務所では、遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいるケースに対して、以下のような対応を行っています。
これまでの協議・調停の経過を確認
相手方が調停に応じない理由の分析
相続財産の内容や相続関係の整理
調停手続内での解決を図るか、審判へ移行するかの検討
不在者財産管理人選任の必要性の判断
状況に応じた戦略的アドバイス
調停期日への同席と代理人としての主張
必要書類の作成・提出
裁判所とのやり取り
代理人として相手方に調停参加を促す通知
法的リスクを説明し、協力を促す
間接的なコミュニケーション経路の確立
調停から審判・訴訟まで一貫した対応
遺産分割が確定した後の名義変更など各種手続き
財産の分配作業(不動産の売却、預貯金の相手方相続分の送金など)のサポート
遺産分割調停で相手方が呼び出しを無視するような困難な状況こそ、早期の専門家介入が重要です。問題が複雑化する前に、法的知識と経験を持った弁護士にご相談ください。
リブラ共同法律事務所では、相続問題の解決に豊富な経験を持つ弁護士が、あなたの状況に寄り添いながら最適な解決策をご提案します。
調停の呼び出しを無視する相続人への対応でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。初回相談では状況をお聞きした上で、解決に向けた具体的な道筋をご説明いたします。