〇この記事を読むのに必要な時間は約9分23秒です。
✅故人の財産がどれくらいあるか把握している者がおらず、相続の話が出来ないまま何年も経っている
✅故人名義のままの財産があるが、親族間で話をする機会がなく放置している
✅遺産分割協議がいつまでもまとまらない
…このような方はいらっしゃいませんか?
遺産分割自体に、いつまでにしなければならないという法律上の期限があるわけではありません。
ですが、遺産分割が終わらないことで相続人の方が不利益を被ったり、法的紛争に巻き込まれたりすることがあります。
こちらの記事では札幌市近郊で多数の相続問題を取り扱ってきた弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、被相続人の遺産を分割しないまま放置していることで起こる問題につき、解説いたします。
被相続人名義の財産は、遺産分割が終わるまでは相続人全員が法定相続割合で共有している状態になります。
そのため、特に相続財産のなかに不動産が含まれているケースでは、たとえば建物の外壁工事等の機能・用途の軽微な変更には相続分の割合に従い過半数の賛成を得ねばならず、また共有不動産を賃貸に出したいときや売却して換価したいときには相続人全員の同意が必要になるなど、民法上の共有制度の規定に従わなければならず、円滑な利用が難しくなります。
さらに、遺産分割未了の状態が長期化すると、相続人が亡くなってしまい新たな相続が発生する可能性も高まります。そうなると更に共有者が増え、相続人間の関係も希薄になったり、不動産に関心のない相続人も出てきたりすることで不動産の活用がますます困難になってしまいます。
また、2024(令和6)年4月に施行される改正不動産登記法のもとでは、①改正法の施行日(2024年4月1日)、および②「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」、のどちらか遅い方の日から3年以内に相続登記をすることが義務化されます。
上記の期間中に正当な理由もなく相続登記を怠ると、10万円以下の過料に処されるようになります(改正不動産登記法第164条)。
相続が開始したことと自身が相続人であることを法務局で申告するだけ行え、過料の対象から外れることのできる「相続申告登記」という制度も新設されますが、これも後で遺産分割協議がまとまるまでの暫定的な対応でしかないので、今後は速やかに遺産分割協議を行う必要性がより増していくと考えられます。
金融機関では相続トラブルの回避のため、口座名義人が死亡した事実を把握した時点で故人名義の口座を凍結します。そのため、遺産分割未了のままでは原則として相続人が単独で預貯金を引き出すことができません(※)。
また、法定相続分に従った遺産分割ではなく特別受益を考慮してほしいと考えている場合、あるいは他の相続人による遺産の使い込みが疑われている場合などは故人名義の口座の取引履歴が重要な証拠となりますが、各金融機関の取引履歴は過去10年間分までしか遡って取得することが出来ません。遺産分割を放置していると、こうした特別受益や使い込みの主張の根拠となる資料収集も困難になってしまいます。
例えば、故人と同居していた家族や葬儀を取り仕切った親族が故人の口座から生活費や葬儀費用などを確保しておきたいということもあります。そのようなケースに対応するため、2019年7月1日に施行された改正法のもとでは、遺産分割協議が調う前でも、相続人が単独で⑴金融機関窓口での仮払い請求、または⑵家庭裁判所への申立てを行うことで払戻しができるようになりました。
⑴は金融機関ごとに「相続開始時の預金残高×3分の1×法定相続分」かつ「150万円以内」の金額の制限がありますが、⑵はそのような制限はありませんが、すでに遺産分割調停または審判が申し立てられていることが前提となっている手続です。
なお、仮払いを受けた場合は、当該共同相続人が遺産の一部の分割により取得したものとみなされ、以降は仮払い分を含めて遺産分割を進めることになります。
相続税の計算においては、「配偶者控除」という、被相続人の配偶者が相続する財産が法定相続分(遺産総額の2分の1)または1億6000万円までであれば相続税がかからない、という制度があります。
また、被相続人が住んでいた家の宅地や事業をしていた宅地について、被相続人との同居の有無等の状況に応じた要件を充たす場合に、一定の面積の範囲で不動産の評価額が最大8割下がる「小規模宅地等の特例」や、被相続人の営む農業を引き継ぐ相続人について、一定の要件を充たすことで農地にかかる相続税の納税が猶予・免除される特例等もあります。
これらの制度は、残された家族の生活基盤の保障やスムーズな事業承継の実現といった目的で整備されているものですが、いずれも相続税の申告書の提出期限までに遺産分割を終えていなければ適用されません。
遺産分割協議を始める前提として、その対象である相続財産の内容(種類・金額)や、財産を引き継ぐ相続人が誰であるかが確定されていなければなりません。もし後から別の被相続人名義の財産が出てきたら改めて分割しなければなりませんし、新たな相続人の存在が判明したときには遺産分割自体が無効になってしまいます。
そこで、相続財産調査・相続人調査という手順を踏むことが重要になります。
>>相続財産調査について、詳しくはこちら
>>相続人調査について、詳しくはこちら
相続財産調査は預金通帳や権利書など、被相続人の遺品から手がかりを探し、金融機関、法務局、市町村役場などで資料を集めていくという方法、相続人調査については被相続人の出生から死亡までの戸籍から、各相続人までつながる戸籍を順次取得していくという方法をとっていくのが基本です。
ただし、特にすでに相続開始から時間が経っているケースでは財産調査に必要な手がかりが散逸していたり、数次相続が発生し相続人調査のために必要な戸籍が膨大になっていたりと、手続に不慣れな方には手に負えない事態になっていることも少なくありません。
また、例えば
「面識のない相続人がいてどのように協議を進めたらよいか分からない」
「不動産や株式の適切な分割方法が分からず、意見が対立している」
「話し合いに応じてくれない相続人がいる」
…といったように、他の相続人との協議が中々思うように進まないこともあります。
ですが、だからといって遺産分割をしないまま更に放置すれば問題がより複雑化するおそれもあり、最悪の場合、親族間の関係が修復不可能となってしまう可能性もあります。
話し合いでの解決が難しいときには、家庭裁判所での調停手続を利用することも考えなければなりません。
もっとも、裁判所へ調停を申し立てるにも戸籍謄本や相続財産に関する資料を準備しなければなりませんし、申立後も裁判所から追加資料の提出を求められることも有ります。また、期日においても調停委員を説得するために必要な主張・立証が出来なければ、思ったような解決に至らないこともあります。
協議が行き詰まっていると感じられたら、お早めに弁護士などの相続の専門家に相談されることをお勧めいたします。弁護士が代理人として間に入ることで裁判所の手続を経ずとも迅速に紛争が解決することもありますし、やむなく調停手続に入った際も法的根拠に基づいた適切な主張をすることが出来ます。
当事務所ではこれまで相続について多数のご相談、ご依頼をお受けしてまいりました。遺産分割を巡る相続人間のトラブルの解決だけでなく、相続財産や相続人の調査や、協議がまとまった後の相続手続についても、ワンストップでのサポートが可能です。
ご相談の際には、ご相談者様の希望される解決方法になるべく寄り添った形でご提案をさせていただきますので、札幌市近郊にお住まいで遺産分割が出来ずにお困りの方は、弁護士法人リブラ共同法律事務所へお気軽にご相談ください。
>>弁護士法人リブラ共同法律事務所の無料相談について、詳しくはこちら