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争族対策

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近年、遺産相続は、それをめぐって争う親族のことを揶揄して「争族」というほど、トラブルが生じやすい分野といえます。

争族とは?

遺産相続は、自らの努力に基づかず大きな財産が転がり込む数少ない機会であり、遺産を家族、親族で分け合うことから、いわゆる骨肉の争いが発生することは珍しくありません。
一見、関係が良好であったとしても、ちょっとした感情の行き違いから、過去の恨みつらみが顕在化し、当事者同士で話し合いもできなくなるケース、前妻の子と後妻や後妻の子が深刻な感情的対立を抱えているケース、相続人の中に行方不明者がいるケースと、問題となりそうな場合はいくらでも挙げることができます。
また、遺産はプラスのものだけとは限りません。莫大な借金が残される場合もあり、相続放棄をした影響が他の相続人に波及していくといったケースもあります。

それでは、具体的に遺産をめぐる争いにはどんなことが起こるのか、また、争いを予防するにはどうすればよいかについて、以下、ご説明します。

遺産をめぐる争い

プラスの財産をめぐって

やはり、遺産をめぐる争いは、誰がどれだけの遺産を取得できるかということが紛争になりやすいといえます。

民法では、被相続人との関係(配偶者、子、兄弟姉妹等)から法定相続人となる範囲と、相続分が定められています。
しかし、例えば、同じ子どもという関係にある相続人同士であっても、被相続人の生前ずっと介護をしていた相続人や、あらかじめ多額の贈与を受けていた相続人がいる場合には、民法の規定通りの相続分が不公平になる場合があります。このような場合には、法律で定められた相続分(法定相続分)では納得ができないということで紛争となります。

また、法定相続分には争いがなかったとしても、遺産の中には、不動産や株、会社の持分といったすぐにはお金に換えることのできない財産が存在する場合があります。この場合も、その財産が将来的に価値が上がるのか下がるのか、そもそもどのように評価するのかについて、具体的な遺産の分割に争いが発生します。

マイナスの財産をめぐって

以上のように争族となりやすいのは、プラスの財産の分配の問題ですが、相続すると負債などマイナスの財産も承継しなければならないため、このマイナスの財産をどのように処理するのかというのも重大な問題です。

マイナスの財産が借金である場合には、貸主である債権者が存在するため、債権者から返済についての督促がなされたり、訴訟を起こされたりすることもあるでしょう。
相続人にとって、身に覚えのない借金について返済を迫られるのは大変な問題といえます。

この点について、遺産分割時に借金の支払いの方法について事実上相続人間で協議をすることもできますが、明らかにプラスの財産よりもマイナスの財産が多いという場合には、「相続放棄」という手続をとって、相続人の地位から離れることをお勧めします。
相続放棄には、3ヶ月という厳格な期限が法定されているため、その期限前に遺産の内容をよく調査し、遅れることなく手続を取る必要があります。

争族となることを予防する方法

自分の亡きあと、大切な家族が遺産をめぐって断絶することを望む方はいません。
そこで、財産を築いた本人が、具体的な相続の方法を予め指定しておき、紛争となることを事前に防ぐこと、これが遺言の役割です。
遺言には、単に「誰にいくら」残すのかだけでなく、相続する条件(負担)をつけることや、遺言によって認知をすることも可能です。

但し、遺言は、要式行為とされており、法律の定めに従った方法で作成しなければ、法的な効果が生じません。つまり、法定された形式に則って作成されていない遺言は、いくら被相続人の意思が記載されていたとしても、争族となることを防ぐことができないのです。
法定されている遺言の代表的な種類には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言があり、それぞれ形式が法定されています。
どの遺言の種類を選ぶのが最もふさわしいのかは、その方の相続人の状況や遺産の金額や種類によっても変わってくるため、遺言作成を考えた場合は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。

また、兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺言によっても奪うことのできない最低限の取り分として「遺留分」が保障されています。遺言の内容が、相続人の誰かの遺留分を侵害している場合、その相続人から遺留分の減殺請求がされると、結局侵害している部分について新たな紛争が勃発するため、遺言によって完全に争族となることを予防できるとは言えません。
遺言が遺留分を侵害するか否かは、遺産全体の評価を前提とするため、特に不動産や有価証券といった評価の難しい財産が遺産となる場合には、専門家に十分相談してから遺言を作成する必要があります。

なかなか人は、自分が死んだあとのことは考えられず、また、家族が遺産で争うことになるとは想像もしたくないものです。
そして、残される家族も、相続トラブルが起きる危険性を薄々感じていながらも、「死後のことを考えること自体縁起が悪い」「がめつい人だと思われたくない」といった感情から、積極的に遺言を作成するよう勧めることは難しいものといえます。
しかし、遺言書さえ作成していれば、そもそも争いにならずに済んだというケースを非常によく目にします。
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この記事の執筆者

弁護士法人リブラ共同法律事務所

代表弁護士 菅原 仁人

専門分野

相続、離婚など家事事件

経歴

中央大学法学部卒業後、平成21年に弁護士登録、札幌の法律事務所に入所。3年半の勤務を経て北海道リブラ法律事務所(現弁護士法人リブラ共同法律事務所)を設立。

札幌地域の離婚や相続など、家事事件を主に取り扱っている。現在は札幌市内2か所(札幌・新札幌)と東京1か所(吉祥寺)に拠点を構える弁護士法人の代表として活動している。

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